研究室における超純水は「必需品」なのか?
研究室では、超純水はしばしば「必需品」として扱われます。精製水は、研究室内の水精製システムから採水するか、ボトルなどの容器入り(いわゆるパッケージドウォーター)で購入するか、いずれかの方法で入手可能です。しかし、どちらがより良い選択肢なのでしょうか?
ボトルで買えるのに、なぜ自分で超純水を用意する必要があるのか?
容器入りの純水を使うことは、一見すると便利で魅力的な方法に思えます。使用期限やロット番号、純度を保証する書類がついた「試薬」として、研究室での他の試薬と同様に運用できるからです。
しかし実際には、そう単純な話ではありません。水は他の化学薬品とは異なり、極めて純粋な存在であるため、他の試薬と同じようには扱えません。ボトル入りラボ用水に添付される純度データは、そのまま使用に適していることを保証するものではなく、用途に適合するかを確認するための追加テストが必要です。また、保管や取り扱いによる汚染も大きな問題になります(Whitehead, 2009)。
ボトル入りラボ用水の種類
研究室向けのボトル入り精製水は、以下の3種類に大別されます:
純水または一般的な実験室用グレード水は、1~200リットルの容量で供給されている。これらはしばしば「蒸留水」または「脱イオン水」と表記され、USPまたはその他の薬局方の「精製水」グレードに相当するものとして、またはASTM規格に適合するものとして販売されることがある。
中間純度水は、HPLCなどの特定の用途向けに1~5リットル以上の容量で販売されている。これらはしばしば「HPLCグレード」と指定される。
特定の技術に特化した水は、ボトルまたはバイアルで入手できる。分析証明書付きもある。主な用途はHPLC、LC-MS、分子生物学手法、特にPCRで、1リットル以下の容量が必要な場合が多い。
ボトル入りラボ用水の純度に関する限界
パッケージドウォーターに記載された純度は、容器に充填するための水の純度や、一部のサンプル容器に対して行った試験結果に基づいています。つまり、個別の容器の水がその純度を保証されているわけではありません。容器からの汚染や、開封後の外部からの汚染は、大きな問題を引き起こす可能性があります。
実際、研究室の水精製システムから得られる水とHPLCグレードのボトル水を比較した研究(Tarun et al., 2009 および Whitehead, 1998)では、ボトル水の方にフタル酸エステルなどの不純物が検出されることがありました。このような結果は、使用された水自体の純度が低い、容器の洗浄が不十分、あるいは有機溶媒と同じ設備でボトル水が製造された、といった要因によるものと考えられます。こうした問題を避けたとしても、保管中の溶出物や細菌の増殖による汚染のリスクは依然として残ります。
著者紹介:ポール・ホワイトヘッド博士
オックスフォード大学で化学の学士号を取得後、産業応用分野での化学研究にキャリアを進めました。ロンドンのインペリアル・カレッジで、マイクロ波誘導プラズマ検出器の開発により博士号を取得。ジョンソン・マッセイ研究技術センターにて分析サポートチームの管理を担当し、自動車排気触媒や燃料電池などの貴金属分析に携わりました。その後、ELGA LabWaterのR&D部門にて水精製技術の導入と開発を行い、現在は同社のコンサルタントを務めています。
次回のブログでは、ボトル入り水の保管中および使用中に発生しうる「汚染リスク」について詳しく解説します。