研究室においてボトル入り精製水を使っていますか?
ご使用のラボ用水は、本当に適切な水質で、保管しているボトル自体によって汚染されていないと言えますか?水は実験室で最もよく使われる試薬の1つですが、その重要性は見過ごされがちです。最新のブログで、正しい知識を身につけましょう。
保管中に起こるラボ用水の汚染 ― これは実際にある問題です
精製水のボトルや包装は、多くの場合プラスチックやエラストマー製のキャップで密封されています。これらの素材からは、有機可塑剤、離型剤、接着剤、さらにはそれに含まれる溶剤やモノマーが水中に溶け出す可能性があり、水が有機不純物で汚染されてしまうことがあります。
また、ガラス製の容器であっても、さまざまな無機イオンが水中に溶け出す可能性があり、それによって水の電気伝導率やpHが変わることがあります。Gabler氏や黒木氏の研究では、わずか数時間の保管でも起こりうる汚染事例が報告されています。
こうした容器から溶出する物質(リーチャブル)は、多くの場合、水質にかかわる管理対象汚染物質のリストには含まれておらず、一般的な純度試験では検出されないこともあります。
これらの不純物のレベルは、水の保存期間によっても、また販売業者ごと、同じ業者のロットごと、さらには同じロット内のボトルごとにすら変動する可能性があります。
使用中にラボ用水を汚染していませんか?
ボトル入りの超純水は、容量が小さいほど1リットルあたりのコストが高くなるため、一度に必要な量だけを購入・使用するよりも、大容量を購入するほうが経済的です。そのため、多くの場合は一度で使い切られません。
しかしこのような場合、容器を開けて水を取り出す際に内容物が汚染されるリスクがあります。空気が容器内に入り込み、クリーンルーム環境で作業を行っていない限り、その空気によって細菌、イオン、有機物などの汚染物質が混入する可能性があります。
CLSI(臨床検査標準協議会)は、実験室で使用するボトル入りの水について、純度の劣化を最小限に抑えるために、すぐに使い切れる容量で購入することを推奨しています。また、容器を開封してから使用可能な期間について、各実験室が基準を定める必要があるとしています。
しかし、細菌やエンドトキシンの含有量が非常に少ない水であっても、一度開封すればすぐに汚染される可能性があります。その水を引き続き使用することは、無菌性の維持に対して重大な疑念を生じさせることになります。
著者紹介:ポール・ホワイトヘッド博士
オックスフォード大学で化学の学士号を取得後、産業応用分野での化学研究にキャリアを進めました。ロンドンのインペリアル・カレッジで、マイクロ波誘導プラズマ検出器の開発により博士号を取得。ジョンソン・マッセイ研究技術センターにて分析サポートチームの管理を担当し、自動車排気触媒や燃料電池などの貴金属分析に携わりました。その後、ELGA LabWaterのR&D部門にて水精製技術の導入と開発を行い、現在は同社のコンサルタントを務めています。
次回のブログでは、このようなボトル入り水が実験室での使用に適しているかどうかの検証について詳しくご紹介します。指定された水質グレードへの適合性や、PCRのような高感度なアプリケーションへの影響にも触れていきます。